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iPhoneを修理に出す前に確認すべきこと——写真とプライバシーの守り方

Mehmet Ali Kısacık · 「秘密のアルバム」開発者 · 2026年9月6日 · 10分で読了

Close-up of a broken smartphone with a severely cracked screen.
Photo by ClickerHappy on Pexels

この記事のポイント

  • Appleの公式チェックリストは、バックアップ確認、Apple Cashのオフ、ウォレットのカード削除、Find Myのオフ、身分証明書の持参を求めている。
  • Appleの修理規約は「データの機密性を維持できることを保証しない」と明記しており、バックアップと(可能なら)事前消去は利用者の責任とされている。
  • 2016年には、Apple正規の修理拠点で技術者が顧客の私的な写真をSNSに無断投稿した事件が実際に起きており、Appleは事後に委託先の手順を強化したとコメントしている。
  • 画面やバッテリーの修理では端末を動作可能な状態のまま預ける必要があることが多く、完全消去は現実的でない場合がある。
  • 見られたくない写真だけを隠しフォルダへ移しておけば、通常の写真アプリを開かれても対象の写真自体がそこに存在しない状態を作れる。
  • 隠しフォルダの中身は端末内にのみ保存され、本体のパスコードとは別のPINやFace ID/Touch IDで保護される。

iPhoneの調子が悪くて修理に出す。誰もがいつか通る道だが、いざ窓口に持ち込む前に「この中の写真、誰かに見られたりしないか」と一瞬考えたことがある人は多いはずだ。結論から言うと、その不安には根拠がある。Appleの修理規約そのものが、データの機密性を保証しないと明記しているからだ。

修理に出す前にAppleが求めていること

まずはApple公式が案内している手順を押さえておこう。

Apple サポートは、iPhoneやiPadを修理に出す際の準備として次のような項目を挙げている。

このうちFind Myのオフは特に軽視されがちだが、Appleは同ページで「Find Myをオフにしていない場合、修理を受け付けられないことがある」と明言している。うっかり忘れると窓口で足止めを食う原因になるので、出発前に必ず確認したい。

一方で、Appleのこの公式チェックリストには「Face IDやTouch IDの登録を外す」「アカウントからサインアウトする」といった案内は含まれていない。もし気になるならそれは利用者側の判断でやっておく分には構わないが、Appleの指示として紹介するのは正確ではない。

パスワードやパスコードの扱いについても、Appleは明確な注意を出している。Apple Account(旧Apple ID)のパスワード、デバイスのパスコード、その他のアカウント認証情報は、どんな理由であれ誰にも共有しないようにと案内されている。修理窓口や電話サポートを名乗る相手からパスコードを聞かれることは基本的にない、と覚えておくといい。

  • iCloud、Mac、PCのいずれかでデバイスをバックアップする
  • 「設定」>自分の名前>「iCloud」でバックアップが完了しているか確認する(「iCloudに保存済み」の表示)
  • ウォレット内のApple Cashをオフにする
  • ウォレットからカードやパスを削除する
  • 「設定」>自分の名前>「探す」でFind Myをオフにする
  • 保留中や未完了の修理履歴がないか確認する
  • 本体、付属品、購入時のレシート(あれば)、公的な写真付き身分証明書を持参する

Appleが保証していないこと

ここからが本題だ。Appleの修理規約——一般サービス規約直営店でのサービス規約——を読むと、データの扱いについて次のようなことが書かれている。

つまりAppleは「バックアップしてから、できれば消去してから持ってきてください」と求めながら、同時に「機密性は保証できません」とも言っている。これは矛盾ではなく、正直な線引きだ。修理を担当する現場のスタッフや提携工場の技術者が端末の中身に一切アクセスしないという運用上の保証は、少なくとも公開されている規約のどこにも書かれていない。

この「保証できない」が単なる建前ではないことを裏付ける出来事が過去に実際にあった。2016年、オレゴン州の女性がApple正規の修理に端末を送ったところ、サクラメントにあるPegatron運営の修理拠点に渡り、担当した2人の技術者が彼女の私的な写真や動画にアクセスし、本人のFacebookアカウントにアップロードするという事件が起きた。彼女がこれに気づいたのは、友人からその画像について連絡を受けたことがきっかけだったという(ViceNotebookcheck)。

この件が広く知られるようになったのは2021年、Pegatronと保険会社の間の別件訴訟がきっかけだった。その訴訟資料には425万ドルや170万ドルといった金額が登場するが、これはPegatron側と保険会社の間で争われた金額であり、被害者本人が受け取った賠償額として確定しているわけではない。Appleはこの件について、顧客データのプライバシーを「極めて重く受け止めている」とコメントし、事件後に委託先での取り扱い手順を強化したと説明している。事件そのものは2016年の出来事で、Appleが対応済みの過去の一件として捉えるのが妥当だろう。

  • デバイス内のすべてのデータをバックアップし、可能であれば修理に出す前にデータを消去しておくのは利用者の責任である
  • サービスに伴うデータの損失、復旧、漏えいについてAppleは責任を負わない
  • 修理の過程でデータが失われる可能性があり、それについてもAppleは責任を負わない
  • いわゆる「データ移行」のサービス工程において、Appleが顧客データのコピーを転送・保存することはない
  • (直営店向けの規約では)Appleはデータの機密性を維持できることを保証しておらず、可能であれば事前にバックアップと消去を行うことを推奨している

バックアップだけでは足りない理由

「じゃあバックアップさえ取っておけば安心」と思うかもしれないが、それはデータを失わないための備えであって、修理中に誰かに見られないための備えにはならない。バックアップを取っても、写真アプリの中身はそのまま端末に残る。

では全部消去すればいいのかというと、それも現実的ではないことが多い。画面割れ、バッテリー劣化、カメラの不具合といった修理では、技術者が実際に症状を再現・確認するために端末が普段どおり動く状態——ログインしたまま、問題が再現できる状態——である必要がある場合が多く、完全消去してしまうと修理そのものに支障が出ることがある。

つまり「バックアップは取るが、消去はできない」という状況が現実には多い。この隙間を埋める現実的な手段が、見られたくない写真だけを普段の写真アプリから隠しておくことだ。

秘密のアルバム - 写真の隠しフォルダ(Secure Folder: Incogni Vault)は、そうした場面のために作られたiPhone向けの隠しフォルダアプリだ。見せたくない写真や動画、書類、メモを通常の「写真」アプリから移動させ、本体のパスコードとは別のPINまたはFace ID/Touch IDで守られたプライベート金庫の中にしまっておける。修理に出す前にこの金庫へ移しておけば、技術者が通常の写真アプリやファイルアプリを開いたとしても、そこには何も表示されない。金庫の中身は独立したPINでロックされているため、暗号化されているとか見られる心配が一切ないとかいった保証まではできないが、「通常の操作で目に入る場所には存在しない」という状態を作れるのは実用上大きい。金庫の内容は端末内にのみ保存され、秘密のアルバム自体がどこかのサーバーにアップロードすることもない。

修理前にやることをまとめると次のようになる。

この順番で準備しておけば、Appleが求める手続きを満たしつつ、Appleが保証していない部分——プライバシーの機密性——も自分自身の手でカバーできる。

  • iCloud、Mac、PCのいずれかでバックアップを取り、完了を確認する
  • 見られたくない写真・動画を隠しフォルダへ移動しておく
  • Apple Cashをオフにし、ウォレットのカード・パスを削除する
  • Find Myをオフにする
  • 本体・付属品・レシート(あれば)・身分証明書を用意する

よくある質問

修理に出す前に必ず初期化(消去)すべきですか??

Appleの規約は可能であれば消去することを推奨しているが、画面やバッテリーなど動作確認が必要な修理では、端末を通常どおり使える状態のまま預ける必要がある場合が多い。バックアップを取ったうえで、見られたくない写真だけを隠しフォルダに移しておくのが現実的な折衷案になる。

Find Myをオフにし忘れたらどうなりますか??

Apple サポートによれば、Find Myがオンのままだと修理そのものを受け付けてもらえない可能性がある。窓口に持ち込む前に「設定」から必ずオフになっているか確認しておきたい。

秘密のアルバムに移した写真は暗号化されて見られなくなりますか??

そこまでの保証はできない。秘密のアルバムは、写真や動画を通常の「写真」アプリから隠しフォルダへ移し、本体パスコードとは別のPINまたはFace ID/Touch IDでロックする仕組みで、通常の操作で見える場所からは姿を消す。ただし断定的な保証をうたうものではない。

修理担当者にパスコードを聞かれたら教えていいですか??

教えるべきではない。Appleは公式に、Apple Accountのパスワードや端末のパスコードを誰にも共有しないよう注意喚起している。正規の修理プロセスでそれらの情報を求められることは通常ない。

2016年の事件は今でも起こり得るのですか??

公開情報からは、これはAppleが把握し事後に委託先の手順を強化したと説明している過去の一件であり、現在進行形の運用実態として確認されたものではない。とはいえ、Appleの規約自体が今も「データの機密性は保証しない」としている以上、事前に自分でできる備えをしておく価値はある。

写真を、自分だけのものに。

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